《MUMEI》 入学式…のはずだった「ここが、藍海学園…。まんま、王道ですね」 藍海学園の門の前に立ち、校舎を眺めていた青年が一人呟いた。 彼がその学園の真新しい制服を着ていることから、この学園の新入生であることが分かる。 「さて、どうやって中に入りましょうか…」 門は固く閉ざされていて鍵が掛かっている。 外から門を開けるのは無理そうだ。 「それにしても、静かですね。まるで誰も居ないみたいな…」 「何を、しているんですか?」 彼がぶつぶつと呟いていると、門の内側から問い掛けるような声が聞こえてきた。 「あ、その…入学式に…」 「え…。入学式は明日ですが?」 「明日…?」 彼に問い掛けてきたのはどうやらここの生徒らしく、制服を着ていた。 だが、今はそんなことよりも重大な事実が判明した。 彼は入学式の為に来たのだが、その入学式が今日ではなく明日だということ。 彼はそれを知って呆然と立ち尽くした。 彼の家からこの学園までは、約三時間。 そして交通費も馬鹿にならない程に高く、バスも一日に二回しか来ないのだ。 「どうしましょう…」 「あの、取り敢えず入りません?」 「あ、はい」 彼が途方に暮れていると、男が中に入らないかと聞く。 彼が入ると言うと、男は門の鍵を開けて彼を中へと通した。 前へ |次へ |
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