《MUMEI》

授業が始まる前に、元に戻ったってことを報告したい人がいた。



椎名くんを誘おうかと思ったけど、
なんだか声をかけられなくて
結局ひとりで教室を出てしまった。


保健室へ向かって歩き出すと、




「蓬田!!」



私の名前を呼ぶ、私の大好きな声。



どきりとして振り返ると、




「保健室、行くんだろ?
―…おれも行く。」



椎名くんがそう言って私の隣に並んだ。



「う、うん…」



そうだよね。

椎名くんはこういうとこちゃんとしてる人だ。




―…私ばっかり変に意識して―…



恥ずかしいのと
椎名くんが隣にいるのとで顔が真っ赤なのに気がついて、


私は、保健室に着くまで


一度も顔を上げることができなかった。

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