《MUMEI》 「ファウル!赤4番、フリースロー!!」 ホイッスルの音と共に、 審判の声が響き渡る。 「わりいな、」 起き上がりながら、小木に片手を上げる。 小木がわざとぶつかって来ようとしたところを避け、 派手に転んだふりをした。 小木のファウルで、おれのフリースロー。 おれが放ったボールは、 軽い音を立ててリングに吸い込まれていった。 これで、21−6。 「みつる、完全復活だな!!」 大石が片手をおれに差し出した。 「おう!」 その手にハイタッチする。 「うちの男子負けてるって〜!!」 「え〜、だっさ!!」 「椎名く〜ん!!ファイト〜!」 名前を呼ばれて振り返ると、 バレーの試合を見飽きたのか、 半数くらいの女子たちがおれたちの試合を観戦していた。 蓬田のチームは試合が終わったらしく、 おれたちのバスケを見ている。 その中に、蓬田の姿を見つけた。 おれと目が合うと、蓬田はにっこりと笑った。 そして、口の形だけで 「すごい」 って、言った、…と思う。 「…こっから、手ぇ抜かねえからな」 小木が、おれを睨みつけて言う。 ―…余裕。 前へ |次へ |
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