《MUMEI》

「髪、伸びたな。」

前髪に触れられる。


「有志も少し伸びた。」

前より鬱陶しそうに眉間に皺を寄せることが増えた。


「暇が無くて。」

それは、休みになると二人で引きこもるからかも。
ぼくら二人ともインドアだから。


「次の休みには切りに行こうか。」

ぼくもそろそろ襟足が付いてきた頃だ。


「長いの嫌いじゃないけどな、」


「伸ばすなら肩くらいまで伸ばして。」

有志が後ろで束ねたらかっこいいかも。


「俺じゃなくて、あゆまのことな。」


「そうかな。ぼくの長いのなんか変じゃない?」


「今のもいいけど、伸ばすと大人っぽく見える。」

うわ、滅多に褒めない有志が褒めてくれた……。
嬉しい……


「そ、そうかあ……あんまり仕事場で言われなかったら、伸ばそうかあ。」

急に照れてきた。


「ああ。」

伸ばしたら有志、喜んでくれるかな。

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