《MUMEI》

気が付くと、私の体はまた宙に浮いていた。


(あれ?ここは・・・。私は、どうしたんだっけ?)


記憶を探る。


(たしか・・・。)


最期に視界に入ったのは、顔をあげた彼。


そのすぐ後に、急ブレーキの音。


衝撃。


悲鳴。


そして・・・


「透子!」


私を呼ぶ彼の声。


もう名前で呼んでもらえないと思ってたのにな。


うっすらそう思ったのを覚えてる。



(あぁ、そうか。)


(だから私は宙に浮いてるのか。)


(俗に言う、『幽霊』っていう状態なんだ。)


(死んじゃったんだ、私。)

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