《MUMEI》

「―…あーあ!!」




昼休み。

裏庭のベンチに私たちは並んで座っていた。



「…椎名君の格好よさは、
あたししか知らなかったのに!」



そう言って、祥ちゃんは困ったように笑った。



「―…かなめが、椎名君に助けてもらったって知ったとき…
ほっとしたと同時に不安になったの。
かなめが椎名君を好きになっちゃったらどうしよう、って」



そこまで言うと、祥ちゃんは小さく首を横に振った。



「―…ううん、もっと、ずっと前から不安だった。
かなめには勝てないって、そう思ってたから。
だから、かなめに好きな人ができたとき、
いっぱい応援しよう、って。
あたしの好きな人を、好きにならないように、って。
―…サイテーだよね、あたし」



そう言って、祥ちゃんは少し微笑んだ。



「―…祥ちゃ…」



「何も言わないで。
―…好きになるのに、早いも遅いもないもん。
…あたしは、ふられるのが怖くて…
ただずっと、見てることしかできなかった」



祥ちゃんは、私をしっかりと見つめると、
にっこりと笑った。




「あたし、ちゃんと伝える。
―…すっごく、怖いけどね!!」


「―……!!」


「正々堂々、よ!
―…変な遠慮とかしたら、許さないからね!!」


「―…うん!」


「じゃ、教室戻ろ!!」


「…うん!!」



初めて、祥ちゃんが本音で話してくれた気がする。


「ライバル」になってしまったけど、
それでも祥ちゃんは私の一番の親友で、
私の一番の憧れだ。



だから私も、頑張る。




―…私たちは、並んで教室まで歩き出した。

前へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫