《MUMEI》

しかし、だ。

「もう我慢なりませんよ!師匠!!」

一見物置にも見える小さな小屋でヘルは、懇願にも似た怒号を上げた。

「おうおう。久々に帰ってきたと思ったら、もうクレームかい?」

ヘルとかつてテーブルと呼ばれていたであろうテーブルを挟んで、真正面。

威風堂々とそこに座るのは、仮の師匠。

その師は今を持って尚、その性格と若い容姿を保っており今ではヘルと同い年くらいに見えるが否、彼は謎の魔術か魔呪やなんかで若いころの容姿を保っているのだ。

ゆえに、カルバン師の年齢は弟子はおろか、長年連れ添っている彼の使い魔でさえ彼の年齢を把握していない。

「“ヘブン”はいつもそう言いながら許してくれるんだから萌えちゃうねぇ。」

「師匠。その名は“今は”“ヘル”のものですよ。それにそんなツンデレキャラんなったことは断じてないです。」

まるで呪いのように低く、唸るように反論するヘルはしかし、己が師匠の高らかな笑い声に一蹴された。

そんなカルバン師の横にはニコニコと可愛く笑むルイス兼メロ、正面には最大限憎しみをこめた無邪気なあの笑顔をカルバン師に向けるヘブンが座っていた。

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