《MUMEI》
ジェイオルの目的
まだ何かを言いたそうな雅俊を見て、この好奇心旺盛なのは嫌いじゃないな。と思いながら、かなりの掘り出し物であることが分かった雅俊を、今の依頼主に渡すのは惜しいなとジェイオルは考えていた。

いくら魔力の気配を読めると言っても、なんせスレシルという存在の絶対数が少なすぎるため、ジェイオルと言えども、スレシルを見つけるのは実に2年ぶりだった。

スレシルの気配を見つけて、近くまで来たは良いが、サプリは、学校憑きのフェルとしては最高レベルの実力を持つフェルだったから、学校に近づくことさえ容易ではなかった。

数日をかけてなんとか敷地内に入って、そこでスレシルの気配が異常値を叩き出しているのに気付いた。果たして本当にスレシルなのかと疑いたくなるほど。

ただのスレシルじゃない。

下手したら俺みたいなスレシルハンターをおびき寄せるための罠かもしれない。

そう思って、見極めるためにさらに数日を置いた。


どうやら本物らしい、と確信し、やっと接触しようとしたら、今度はソウランの中に入ってしまった。

サプリが探(サーチ)の能力を持っているとは聞いた事が無かったが、それでも、フェルとして自らが守る学校内に侵入者が入った事くらいは感づくのだろう。


標的にしていた雅俊が異常値だったのに気を取られていて、数日いたのにも関わらず、ジェイオルは雅俊がソウランに入り、完全に気配を遮断してしまってから他のスレシルがいた事に気付いた。

ただし、スレシルとして価値があるのは、能力が一番高く出る覚醒後から約1年間なので、それに該当しないスレシル「の様な」存在には興味すら持たなかった。


さらには今、受けている仕事の依頼主は、力を持つ人間には一切興味は無く、彼らに現れる、純度の高い力の結晶である、スレシル本体の収集をしているノルフェスだった。

異常なまでにフェルに憧れ、しかし性格に問題有りという烙印を押されたその依頼主は、フェルの影響力の表れとも言われるスレシル本体に執着するようになったとか。なんとか。やはり興味が無いのでそれ以上は覚えていない。


フェルの力に影響を受け、その力を吸収したことで能力を覚醒させるスレシル。内なる能力を外から得た魔力によって引き出されたせいか、また別の原因があるのか、スレシルになってしまうとその身体は元々の状態から変化するらしく、フェル界の時間に引っ張られていたり、定期的に吸収した力を放出しないとならなかったりと意外と大変らしい。

そもそもスレシルという結晶さえ出てこなければこんな事にもならなかったと考えるヤツも当然いるわけで、スレシルを取り外してしまえばと思うところだが、しかし、その異常な力の結晶は、本人としっかりとシンクロしているため、身体からそのスレシルを取り外すと、その人間は同時に命を落とす。




だからこそ、雅俊の様な、スレシルの中でもさらに異常なスレシルを、依頼のためとは言えこの場で殺すのは惜しいなとも感じて、うだうだと無駄に時間を稼いでいた。

…依頼がスレシルをペットとして欲しいというものだったら、余計な雑談をせずにさっさと捕まえていた。

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