《MUMEI》 雨の止んだ帰り道。 叶を迎えに来たのは、白髪の少年。包帯だらけの女性。 記紀野嬉々と菜々のクラージマン。 そしてその隣には、 「にゃ!またあったねぇ。おじょーさん。」 見覚えのある、あの青年。 ニット帽からのぞく赤い髪にあの悪戯っぽく歪んだ口。 「おじょーさんがこの件を担当してたんだねぇ。へぇ!成程成程!!確かにおじょーさんだったらこんなに正確な情報だって集められるはずだもんねぇ!にひひ、やっぱ俺の鼻はまだまだよく利くねぇ。」 「憩。静かに。」 このままだといつまでも喋り続けるであろう青年を、しかし遮ったのはその横に控えていた腰の大きく曲がった老婆だった。 「まずは、名を名乗るのが礼儀であろう。」 そういうと老婆は、ゆっくりと前に進み出てきた。 「私は、雪女元族長そして現Aランククラージマンのパートナーである、刹那だ。貴方の才能はそこの未熟者から聞いてるよ。」 将来が楽しみだ そういって雪女、刹那《せつな》は鳶色の前髪で隠れている顔のかろうじて見えている口元でニタァと笑った。 「あ・・・有難う・・ございます。」 (あれ?さっきAランクって) 「改めまして」 思わずあの青年を見てしまうと目を細めて二コって笑った。 「Aランク、クラージマンの憩 澪梨。女っぽい名前だからって笑うなよ?おじょーさんの引き継ぎに来た。後は任せな。」 「え?」 叶恵は唖然と目の前にいる最高ランク、憩 澪梨《いこい みおり》を見る。 「サイコウランク?」 「まっ、いちおーね。」 叶恵はその瞬間、彼との間にありもしない壁を感じた。 Dランク落ちこぼれと、最高ランクのクラージマン。 ・・・分厚い壁だった。 「おじょーさんの名前は?」 「いっいやや!!!わゎ私のな・・名前なんて!恐れ多い!!!」 視界の隅で嬉々も驚いた顔をしたのが分かった。 前へ |次へ |
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