《MUMEI》

「出てないわけ無いだろう。」


「えぇ?いや、自分の身体にこんな目立つのあったら気付くだろう。普通。」


「…俺を指すな。」


ジェイオルの言葉に雅俊は山男の左腕を指さす。対して山男は小さな声で抗議する。

山男の左腕は、出現させた文様がしっかりと左手を覆い尽くすように浮き出ていて、先ほど雅俊に見せるために腕まくりをしたままだったそれは、存在感を露わにしている。


ふとあることを思いついたジェイオルは、インプット魔法を出力する準備を密かにしながら話を続ける。

「リキの文様は、他のスレシルに比べると、かなり広範囲だからな。マサのは別にこんなに目立つもんじゃないんだろう。」

「じゃぁ、その中心にある石は?それのサイズも千差万別?」

「いや、結晶のサイズは多少誤差はあるにしても大体1cm位のはずだな。」

「服の下に隠れてるんじゃないのか?善彦は、普段の生活ではほぼ見られないような場所に出ていたけど?」

「それだとしても、毎日風呂に入ってて気付かないわけ無いでしょう?身体洗う時とか、見るつもり無くても、なんか出てくればさすがに目が行くんじゃ…」

そこまで言って雅俊は固まる。



「見るつもりが無いと、見えない場所くらい、いくらでもあるだろう?」

そう言ってやけに「にっこり」笑うジェイオルの右手は、雅俊に向いていた。

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