《MUMEI》

あら?


由里香は滅多に見ない将貴の癖を見て、
笑みを漏らした。


眉間に皺を寄せ、
且つ人差し指を額にある傷に当てる行動。


それは将貴が何かに困り、
打開策を導き出すために考えるお決まりのポーズだった。


だが滅多に困ることはないため、
この癖が見られるのはいつも側に控えている幹部達か、
由里香しかいない。


これは予想以上に追い詰められているわね。


由里香はクスリと微笑むと、笑顔で提案した。


「私のバイクで送ろうか?」


「いや、いい。」


由里香の笑顔が引き攣ったものに変わる。

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