《MUMEI》

「何よ!

人がせっかく親切心で提案したのに!

即答って酷いでしょ!」


「わ、わりぃ。

けど・・・。」


「けど?」


お前の運転意識とぶから。


将貴は般若のような顔をした由里香を前に、
その言葉を寸前で飲み込む。


「あ、いや・・・。

そのお前には迷惑かけらんねぇから、
やっぱ自分で行くわ。」


ごまかしの笑い声を混ぜながら、
じりじりと由里香から後退して玄関へ向かう。


「でも大丈夫なの?

普通のバイクだったら間に合わないでしょ?」


確かに。


悟城さんからもらったあのバイクなら、
完全に遅刻だ。


でも・・・。


「大丈夫。

取っておきのがあるから。」

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