《MUMEI》

「スレシルと文様、お前、右肩から背中にかけて出ていたんだよ。」

「!」


山男の言葉に、雅俊は右肩の違和感が、パワーゲージを出し入れした時に感じた別の力と、同じ事にやっと気が付く。



…そう言うことか。



それがスレシルによる違和感だったことに気付いた雅俊は、スッと気持ちが切り替わるのを感じた。

突然のジェイオルから受けた攻撃色の強い魔法を浴びて、いわゆる危機的状況に慣れていないと言う事を実感もした。


「スレシル…が、ここにあるんですか?」


不甲斐ない思いもありつつ、問題の箇所が見えないのがもどかしい。

しかし、そこにあると分かった途端に、あぁこれが俺の力だ。と、不思議なくらい納得する。



「…だからと言って、自分が何を出来るのか、すぐに分かるわけではないのか…」



厄介な…まぁ、呪文を唱えたから使える。って訳でも無さそうだし、突然魔法の使い方を教えてくれる誰かの声が聞こえてきたりしたら逆に怖い…

…俺の能力は何種類かあるとか言っていたよな。組み合わせ…を考えつくほどの経験は全く無い…
せめて、「火」とか「水」とか分かりやすければ良かったのに…現実そう甘くは無いか…



もやもやと考えながらチラリとジェイオルを盗み見る。何かするでもなく、未だニヤニヤとこちらを見ているだけだ。

少なくとも、向こうが余裕かましている間が、逆に、逃げるチャンスだ

と雅俊は本能的に悟る。

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