《MUMEI》
夏到来、性転換はじめましたA
 こうして私と彼女の時間は始まった。彼女といる時はとても楽しいし、幸せを感じる。

 しかし何か変だ。

 私の中の、付き合う前のたぎるような感情が嘘のようになくなってしまったのだ。
 彼女の部屋のベッドの上に横たわっている今も、疑問が頭を回る。
 彼女といると確かに楽しい。が、顔かま照るような興奮をまるで感じない。彼女といると確かに幸せ。しかし、彼女の一挙手一投足にどきまぎすることがない。
 その不可思議について考える。 私に覆いかぶさっているような体勢の彼女が潤んだ瞳で見つめてくる。
「ああ、そうか」
 彼女の顔が近づいてきた時、不意にその謎が解けた。
 女になって失った物は彼女にたいしての感情だけではない。
 以前から持っていたエッチ本には性的興奮を喚起されなくなったし、スカートの短さを視線で追わなくなった。
 要は男としてのエロスを失ったのだ。
 つまり女になってしまったことで、私は彼女を恋愛対象として見れなくなってしまったのか。
 私は彼女の唇を避けた。

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