《MUMEI》
ミレニアム・エネルギー@
 西暦20XX年。
「やったぞ!」
 研究室に歓喜の声が響いた。それを聞いた助手が、小踊りする博士に何事かと訊ねる。
「どうしましたか、博士」
「ついに完成したのだ」
「完成……まさか超小型原子炉ですか!?」
「そう、それだよ」
 超小型原子炉とは彼らが完成を目指していたエネルギー炉である。現在の原子炉と同等以上のエネルギーを生み出すことが可能であり、それにも関わらず生産コストが低く安全性も高い。つけ加えて原子炉のように大量の放射性廃棄物を出さないという、まさに夢のような機関であった。
「やりましたね」
 助手も博士と共に踊りだす。
「そうだとも、我々はやったのだ。車がなんだ、ジェット機がなんだ、宇宙船がなんだ。もうそんな物に使う燃料に悩まなくてすむ」
 言うまでもないことだが、現在はエネルギー不足の時代である。
 一時代を築いた化石燃料の大半は枯渇してしまい、その歴史にピリオドを打とうとしている。しかし原子力発電は廃棄物処理の問題が残っているし、食料も少ないのでバイオマスエネルギーに拠りすぎるわけにもいかない。
 残った微小の資源を国同士で奪いあっている、というのが現状だ。
 しかし彼らの発明によって、その問題はまさに解決されようとしていた。
「これで全世界のエネルギー問題が解決するのだ。エネルギーを巡っての国どうしの争いなんて馬鹿げたもの、なくなるぞ」
 彼らは明るい未来を確信した。



 西暦30XX年。
「やったぞ!」
 コロニー内部の研究室に歓喜の声が響いた。それを聞いた補助ロボットが、小踊りするサイボーク博士に何事かと訊ねる。
「どうしましたか、マスター」
「ついに完成したのだ」
「完成……まさか超恒星装置ですか!?」
「そう、それだよ」
 超恒星装置とは彼らが完成を目指していたエネルギー炉である。太陽には及ばないがそれに近しいエネルギーを生み出すことが可能である。生産コストはそれに見合い希少な資源を使うが、半永久エネルギー炉のためならば安い物だろう。まさに夢のような機関であった。
「やりましたね」
 補助ロボットもサイボーク博士と共に踊りだす。
「そうだとも、我々はやったのだ。光速宇宙船を何隻動かそうが、テラフォーミングマシンを何台使おうが、居住区に安定したエネルギーを供給できる」
 言うまでもないことだが、現在はエネルギー不足の時代である。
 かつては一斉を風靡した超小型原子炉が今は争いの種になりつつある。惑星開発やらなにやらで必要エネルギーの絶対値が大幅に上昇したため、幾つもの超小型原子炉が作られた。しかしそうなると、いくら低コストとはいえ原料が足りなくなった。
 大量のエネルギーを有する惑星をコロニー同士が奪いあっている、というのが現状だ。
 しかし彼らの発明によって、その問題はまさに解決されようとしていた。
「これで全コロニーのエネルギー問題が解決するのだ。エネルギーを巡ってのコロニー間の争いなんて馬鹿げたもの、なくなるぞ」
 彼らは明るい未来を確信した。

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