《MUMEI》

「そんな急に距離置くなよぅ。寂しいじゃん・・・。」

そう言って澪梨は子供のように口を尖らす。

「なに、そう緊張しなくてもよい。貴方もすぐにAランクになれる。」

うぅ・・・好き勝手言ってくれる。

「か・・・叶恵・・です。」

「叶える恵み?・・・へえ、いい名前じゃん。覚えておくよ。」

そう言うと、澪梨は叶恵に道を開けた。

「んじゃ、気ぃ付けて帰んなよ」

「え?」

「ほら。早くしろ。」

なぜか嬉々は不機嫌そうに言う。

「あ!うん!」

「ばいばーい」

数歩洞窟から出たところで、叶恵はまた洞窟を振り返った。

「あ・・・」

狼の姉妹がこっちを見ていた。

あの姉妹は、これから大丈夫だろうか?

(私がいるより全然安全だけど。)

「・・・あの、憩さん。」

「澪」

「は?」

「名字はだめぇ、澪ならいいよ」

そう言って澪梨は真っ赤な舌をべーと出す。

「・・・澪さん。」

「にょ?」

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