《MUMEI》
吃驚
雅俊が消えた。



「え?」

「出やがったなあいつ」


消えた瞬間は見ていなかった、というよりは、見ていたはずなのに、気が付いたらいなかった。

この何もない空間で姿を隠す場所があるわけもなく、近辺に雅俊の気配も感じない。ソウランから抜け出したのは、明白だった。


「置いていかれたな、先生?」

「べ、別に俺は…あー…」


いくら力が異常値を叩き出しているとはいえ、完全覚醒手前の雅俊に逃げられるとは思いもしなかった。

いや、『壊』を受けた瞬間に、ヤツの能力値が跳ね上がったのを感じた。


「しまったなぁ…あいつの力が見てみたいって思っただけで逃がすつもり無かったんだけど…覚醒させちまったか。そういえば、間(スペース)使えるんだったもんな。」


迷いがあったからなのか。

今まで、どんなに手練れたスレシルを相手にしても、逃げられた事は無かった。負けたのは不本意ながらも、目の前にいるリキともう一人ヨシの時だけだった。

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