《MUMEI》

「うぎゃ〜〜〜!!!」

「ちょっとこー、落ち着いて・・・・・・」

「無理〜〜!!うわぁ〜〜!!」

先ほどからこの会話が繰り返されている(5秒おき)。

こんなの無理〜〜〜〜!!!

今宵の目の前には人工で作ったとは思えないリアルな世界が広がっていた。

「こー。歩かないと出れないよ」

「う〜〜!!だって〜〜!!」

今宵は目尻に涙をいっぱいにためて、歩雪の顔を見上げた。

もう何にも考えらんないよ〜!!!

そんな今宵を見て、歩雪はため息をついた。

「しょうがないな」

「へ?」

歩雪がぐいっと今宵の体を自分に引き寄せた。

今宵の頭を歩雪の大きな手で包む。

要するにぎゅっと横から抱きしめられている形になっていた。

「ふ、ふふふ歩雪くん!!!?」

「暴れないで。とりあえずこうすれば見えないでしょ」

歩雪は平然と言うと、足を進めた。

うわぁ!!!

ち、近い!!

これだと別の意味でドキドキしちゃうよ!!

その時。

グシャァッ!!!

何かが潰れたような気持ちの悪い音が響いた。

「うにゃあああ!!!」

この状態をどうしていいか分からなかった今宵だったが、この音を聞いて思わず歩雪の胸に顔をうずめて抱きしめた。

「大丈夫。作り物だよ」

「分かってても怖いんだよぅ」

「はいはい」

歩雪は震える今宵を見て口元を緩めると、今宵の頭を撫でた。

ドキドキするけど、歩雪くんと一緒だと安心する―。

「あ、出口」

「ホントッ!?」

ふと歩雪が見つけた先には、外からの光が差していた。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫