《MUMEI》

…どうしたものかなぁ。

逃げられたしな。ここに留まっている理由なんかないか。引き上げるの癪だなぁ。畜生。



雅俊が逃げてしまったと思っているジェイオルは考えていた。ふと、山男に目をやる。



…成熟したスレシルって、力を失っているからペットとしての価値は無いし、結晶も隠してるから価値が無い。って言われてるけど、目の前にいるリキは今、腕にしっかりスレシルも文様も出しているじゃないか。

これって、ある意味めっちゃくちゃ価値高いんじゃねぇか?ある意味でレア物だぞ。。。

代替品だけど、上手いこと説得すりゃ高値で引き受けてくれるかも…丸腰だし。今ここには邪魔する者もいないし、ソウランの中で殺ったら、片付けもいらない。

楽な仕事になりそうじゃねぇか。

ジェイオルはニヤリと笑い、山男へ声を掛けた。


「なぁ、リキ…え?なんだ?えぇ??」


途端に、周囲に大量の信じられない数の雅俊の気配が拡散して現れた。


「なんだ?どういう事だ!一体何が起こっている!?」


感じる気配の中でも近いものに目を向けるが、雅俊はおろか、何も無い。

ただただ、無数に雅俊の気配に四方八方囲まれていた。


軽くパニックに陥っていて、はたと気が付く。


「畜生!やられた!くそ!」


山男もその場から消えていた。

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