《MUMEI》

「おかぁさぁん」

ゆらぁり、と忍びの影が動いた。

おさげにした白銀の髪が夜月の光に反射した。

そして髪と小柄な体全体のシルエットを隠してしまうほどの大きな服の間から見える細い女性特有の首からは、彼女の美しさが分かる。

たとえ、顔をマスクで隠していても

たとえ、足元に赤い血の海がそこに喉元を裂かれた女性の死体が浮かんでいて、その血がべっとり付いた巨大な曲刀をそれぞれ両手に構えていても、だ。

忍びは、伏し目がちに死体を見た。

自分の腕より遙かに長い袖で手は見えないが、その内側で逆手に持った曲刀を握り直す音が微かにした。

毛布で出来ているつなぎのような服の下もほとんど地面についているが、血はほとんど付いていない。

「おかぁさぁん?」

曲刀が鋭い音をたてて夜空に振り上がる。

「まだ、生きてるんですか?」



ブシュッ

と、赤い華が夜空に舞った。












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