《MUMEI》

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「ごめんね、汚くて」

「全然ですよ!寧ろあたしの部屋のほうが………」






初めて男の人の部屋に入った。


もっと汚いものだと思ってたが全然綺麗で、やっぱ王子だなとおもった




「それじゃはい、お給料」

「あ、ありがとうございます!!」

「こちらこそ美咲の我が儘に付き合ってもらってありがとうございます」

「へ?い、いや」




ポンポン頭を撫でられ、男の人に優しくされるのなんか初めてだから恥ずかしくて下を向く。






「そ、それじゃあたしはこれで!」

「送っていきましょうか?」

「いやご心配なく!それでは失礼しました!!」




そう言ってちよこは鞄と給料袋を持って出ていった。




菜月は部屋に一人になり「ふぅッ」と、ため息をこぼす



チラッと襖の方に視線を向け





「いい加減出て来なさい」

「………………………」

「どうして隠れる必要があるんです」

「………うるせー、別に隠れてるつもりなんてねーよ」




バンッと襖を開けて入る美咲

その行動に目を細める菜月






「いつにもまして口が悪いですね」

「ふーん、そりゃすみませんねぇ」






「「…………………………」」




ただ無言の重圧感。

菜月は呆れたような疲れたような入り交じったため息を溢す…








「あの子を見送らなくていいのか?無理やり連れて来て、仕事をさして………ありがとうのひとつでも言ったのか?」

「…知らね」



菜月の目を見ずに答える





「ハァ………。素直になれず天の邪鬼なとこは、お前の悪いとこだ」


「はッ?………天の邪鬼はアンタのほうだろ?アンタが恋芽のこと好きだってことくらい知ってんだよッ!!」

「………………待て、何故恋芽がこの会話に出てくる?」

「俺を天の邪鬼ってゆうからだろ、アンタだって俺と変わんね―くらい自分に嘘ばっか言ってんだよ!」

「…………………」

「アイツだってアンタのこと見てる。なのに何でアンタは自分のもんにしよーとしねぇんだ!?何で捕まえとかねーんだよ!アイツがどんだけ苦しんでんのかわかんねーのかッ!?」



言いたい放題怒鳴りちらかし、苦虫を噛んだような表情をする美咲





「美咲………」
「だからアンタが嫌いなんだよ」






ピシャリと襖を閉め、耳を澄ますと、階段の降りる音がした。









「……………どちらも天の邪鬼。だからお前の考えてることもわかる」





開いている窓から覗く月を見詰める


月はやや欠けていて、あと3日でもしたら綺麗な満月だろう…。








「好きなのは、僕だけじゃないだろ?………」







淡く淡く、小さな頃に実った感情に
どうやって終止符を打てばいいかわからない…………

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