《MUMEI》 突然、ジェイオルが呼びかける。山男はさっき雅俊に声を掛けられる前からまったく動いていなかったが、ジェイオルは既に全然違う方向を向いている。 「今日の所は諦めてやるよ。そっちの作戦勝ちだ。と言っても、お前らをあぶり出す方法なんていくらでもあるんだが、まぁ、今日は俺も思うところがあるからな…」 「…」 負けを認めはしないと言いたげなジェイオルの言葉に対して、声が聞こえていないと分かっていても、山男も雅俊も何も答えなかった。 「ひとつ良いことを教えてやるよ。お前らがこのソウランに入った後にな、校内にいくつかのスレシルの反応を感じた。まだ覚醒前だったが、マサの他にもいるぞ。新人が!」 「!」 「覚醒前なんて中途半端なヤツ興味も無いから詳しくは調べて来なかったがな。」 「ジェイオル…」 雅俊がおもむろに呟く。山男は、相手には聞こえていない、と特に気にしなかったがジェイオルが反応する。 「やっぱりまだいたか。」 「雅俊!?」 山男は焦るが、ジェイオルはまだあらぬ方向を向いているのを見て、雅俊が声だけジェイオルに聞こえるようにしたのだと気が付く。 「色々、教えてくれてありがとう。退屈だった日々がこれから楽しくなりそうでワクワクするよ。」 「お前馬鹿か?場所が割れてるんだぞ?俺はまたいつでもお前を狙うつもりでいるからな。」 「まぁ、それも一つの刺激だったりするだろう。俺は捕まるつもりなんか無いし。」 「ほぉ、言ってくれる…」 前へ |次へ |
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