《MUMEI》

「この状況、俺が納得いくように説明してみろ」
説明を求めてみる
アリスは相変わらず無表情のまま
何を言って返す事もせず、徐に腰に帯びていたらしい剣を抜いていた
「……こいつらは、奴の飼い犬。邪魔だから、全て殺す」
アナタも戦えるでしょ、男にしては色気のある笑みを向けられ
エイジは深い溜息を吐いて返す
だが背後から獣の唸るような声が聞こえ、踵を返すついでに脚を蹴って回していた
「……体術、か。馬鹿そうなあなたらしい戦い方だね」
倒れて行く様を眺めながら、アリスは小馬鹿にした様に更に笑う
その表情に腹が立たないでもなかったが
取り敢えずは目の前のモノを片す方が先、とエイジは荷を翻す
「……以外に早く片が付いたね」
最後の一匹が倒れ、動かなくなってしまったのを確認するとアリスは剣を鞘へ
全身獣の血に塗れ、人相悪く笑うアリスは獣以上に恐怖を周りに与えかねず
エイジは自身の衣服の袖で頬にまで飛んでしまっている血液を拭ってやる
「……服、汚れるよ」
「汚れてる奴が文句言うな」
大体を拭いてやると、エイジは来た道を戻りまた自宅へと歩き始めていた
何故、戻るのか、と小首をかしげてくるアリスへ
「テメェの恰好が汚すぎるからだろうが。そんな物騒ななりしてる奴連れて歩けるか」
「……そういう、ものなの」
まるで自分に関心が無いといった様子のアリス
余りのそれに、エイジは深く溜息をついてしまう
「……もういい。暫く喋んな」
有無を言わせない様若干強く言って向ければ
どうしてか言う事を聞く気になったのか
エイジ宅へと帰り着くまでは一言たりとも声を発しなかった
意外なそれに、エイジは僅かに驚いた様な顔をしてみせる
大人し過ぎるのも却って不気味だなどと内心に思いながら漸くの帰宅
ルカが未だ寝の最中である事に安堵し
エイジは自身のクローゼットを徐に漁る事を始めていた
「これでも着てろ」
さして見もせずに掴んだそれをアリスへ
投げて渡したそれをアリスは受け取り、そして
「……ダサいね」
渡してやった白いワイシャツを受け取り一言
余りなその言い草は取り敢えずは聞かなかった事にし
エイジはすっかり汚れてしまっているアリスの衣服を洗濯機へとぶち込んでいた
「……そんなの洗濯するわけ?あなた」
捨てればいいのに、と呆れた様なアリスの物言いに
だがエイジはソレを完璧に無視し、洗濯機を回し始める
洗濯機がまともに動き始めたのを確認すると、徐に踵を返し
ルカが眠っている居間へ
「……落着きないね。一体どうしたの?」
呆れた様な物言いに、エイジは溜息混じりでアリスへと向いて直りながら
「……出掛けんだろ?あいつ、知り合いに預けてくる」
「へぇ。付いて来てくれるんだ」
さも意外、といった様なアリスへ
エイジは何を言って返す事もせず、寝入っているルカを起こしに掛る
「……先生?」
僅かに身体を揺すって見ればその眼がゆるり開く
未だ夢現のルカへ
エイジはその髪を柔らかく梳いてやる
そしてエイジが出掛けなければならない旨を言うより先に
「先生。ルカ、お利口に待ってるから。大丈夫だから」
ルカからの言葉
これから何かを成そうとしているエイジの邪魔だけはしてはいけないと
慣れない虚勢をルカは張ってみせる
「……私、ターニャおばさんの処で待ってる。いい子にしてるから」
「ルカ……」
「だから、お兄ちゃんを助けてあげて。ね、先生」
精一杯、強がった笑い顔
今まで一人置いて行かれのを極端に怖がっていたというのに
突然に、随分と成長したものだ、とエイジは驚くと同時に微かに肩を揺らした
「……じゃ、帰ったらお前の好きなモン何でも作って食わせてやる」
何がいいかを問うてやれば
「……先生の苺のタルト、好き」
ソレを作って欲しい、と返され
約束、と小指を差し出され指を切ってやった
「アンタもい歳して落着きがないね。エイジ」
漸くターニャ宅へと到着し、事の説明を始めたエイジへ
ソコの家主は酷く呆れた様な表情で呟いた
「で?アンタ、また何所か出掛けるのかい?」
何をしに来たのかを大体察しているのか
言う筈だった用件を先に言われ、エイジはバツの悪さに返答が出来ず返答はせず髪を掻いて乱す
そしてエイジが何かを言い掛けた途端

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