《MUMEI》
帰還
「…」

「はぁ…」



戻ってきた…。酷く気疲れしていた山男はそのまま自分が普段使っている机の椅子に座り込む。

雅俊は無言で突っ立っている。

それをぼーっと見ていて、彼が上半身裸なのを思い出す。机の下の鞄から、掃除と部活見学の時に使うように持ってきているジャージの上着を出して雅俊に向かって放り投げる。


「…あ。どうも…寒!」


ジャージが身体にぶつかって、はっとしたように受け取ると途端に叫び声を上げる雅俊に少しだけ笑う。外は晴れてはいるが、ぼた雪が降り始めている。


「背中大丈夫か?」

「…思い出したら痛くなってきました。」


上着を着る際に背中を見せてもらうと、血こそ出ていないが全体的に真っ赤になっている。


「錬(トレイン)持ってても、俺は『治癒』出来ないからな…保健室行っておくか…」

「え、どう説明するんですか…これ。背中に文様もあるんですよね?怒られませんか?」

「あぁ、その辺は心配いらない。」

「?」

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