《MUMEI》

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「やたら気合い入ってたもんね〜!鬼気迫るっていうか」

茶化すような彼女のセリフに、わたしは勢いよくガバッと半身を起こし、当たり前!と叫ぶように答えた。

「高校最後の大会なんだよッ!?3年間の集大成だよ!?フツーに気合い入るでしょッ!!」

わー!と捲し立てると、ヒロコはうるさそうに眉をひそめた。

「わーかってるって!そんな熱くなんないでよ!」

言いながら彼女はスポーツドリンクが入ったタンブラーを持って来てくれた。
キンキンに冷えたソレを火照った頬にそっとあてがう。冷たい感触がとても心地良かったけれど、わたしはまだ、ぶうたれていた。

膝を抱え込んで、タオルに顔を押し付ける。


「…ホントにホントに、次が最後なんだもん。後悔したくないじゃん」


小さい頃から走ることが好きだったわたしは、中学に入学してからずっと陸上部に所属している。

わたしなりに頑張って来たけれど、これといった記録を残せないまま、とうとう高校3年生になり、最後の大会が目前に迫っていた。



―――6年間、脇目も振らず頑張ってきた成果を、しっかりとした形にしたい。



その情熱だけが、今のわたしを突き動かしていた。



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