《MUMEI》

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急にしおらしくなったわたしに、ヒロコは優しく微笑む。

「マネージャーだけど、わたしだって同じ気持ちだよ?毎日毎日、みんなが頑張って練習してるの見てるんだからさ!」

シャキッとしろぉ!と、豪快に肩を叩いた。
彼女の励ましの言葉に、わたしは力なく頷き、ドリンクを飲む。


―――そのとき。


「おーい!ヒロコー!」


急に大声で呼ばれたヒロコは、はーい!!と、それに負けない声で返事をしながら振り返る。わたしも自然と彼女と同じように視線を流した。


遠くの方から、陸上部指定のジャージを着た男の子がひとり、こちらに手を振りながら近づいてくる。それを目の当たりにしたわたしは、ドキッとひとつ胸が鳴り、頬がが熱くなる。


すっきりとした短髪に、日に焼けた浅黒い肌。背はそれほど高くないけれど、ジャージの上からでもその身体が引き締まっているのがわかる。


「ユウ君だ…」


彼の姿を見つめながら、ヒロコは独り言のように呟いた。わたしはドキドキが止まらず、彼から目を離せなかった。



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