《MUMEI》

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―――『ユウ君』もとい、


武中 勇治(タケナカ ユウジ)。



わたしと同じクラスで、男子陸上部部長。

陸上競技の中でも花形である短距離走者で、男子陸上部のエース。
加えて、端正な顔立ちとスポーツマンらしいイヤミのない爽やかな性格が高い支持を受けていて、彼に想いを寄せる女の子は数知れず。



………かくいうわたしも、その例外ではない。



こちらに近寄ると、勇治は爽やかな笑顔を浮かべて、ヒロコに言う。


「ちょっとタイム測ってくんねー?これから走るからさ!」


ヒロコは、え〜?と嫌そうな声をあげながら、顔をしかめた。

「なんで男子部の面倒見なきゃなんないのよ?」

「ウチのマネージャー、今日休みなんだよ。女子部とやること同じなんだからいいだろ?」

「そんなにヒマじゃないんですけどー」

「カタイこと言うなよー!帰り、何かおごってやるからさ!」

「しょうがないなぁ〜!」


わざとらしくため息をついて見せるヒロコだけど、満更でもないのだろう。少しだけ唇がほころんでいる。



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