《MUMEI》 . 勇治は、サンキュー!と明るく言って、彼女の頭を優しく撫でた。そして、あれ?と目を丸くして彼女の顔を覗き込む。 「ヒロコ、ちょっと太った?」 「ちょっ…!しつれーねッ!!」 「顔丸くなった気がするー」 「うそ!?」 「まぁ、あれだけ毎日甘いもん食ってたら仕方ないよなぁ」 「もぅ!ユウ君たらヒドイ!」 ―――絶え間なく続くふたりのやり取りを傍で見ていて、やるせない気持ちになる。 取り残されたような疎外感。 ヒリヒリと焼けるような胸の痛み。 楽しげな笑い声を聞きながら、わたしはタオルの端っこをギュッと握りしめ、すくっと立ち上がる。 そして、いまだにじゃれ合っているふたりに振り返って、冷めた声で話しかけた。 「…わたし、帰るね。何か調子悪いみたい」 淡々と呟くと、ヒロコと勇治はこちらを見て、首を傾げた。 「どうしたの?さっき、ケガでもした?」 心配そうに尋ねてくるヒロコに、勇治も眉をひそめた。 「大丈夫か?」 急に声をかけられて、わたしはドギマギしてしまった。顔を真っ赤にして勇治から視線を逸らしながら、へーき!と強がるように答える。 . 前へ |次へ |
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