《MUMEI》
.
「…ごめんな」
俺は撫で続けていた手を止めてゆっくり瞬きをした。
「俺…何も知らないくせに、俺のわがままで…秀一の邪魔した…」
傷ついて欲しくないって、俺が勝手に思って
その道を選んだのは秀一なのに
俺は謝るしか、出来なくて。
「ごめん…」
「佑二。俺…」
秀一が再び俺の胸に顔を押しつけた
「…嬉しかったんだ」
「え…」
「俺をこんなに大事に想ってくれてるなんて、知らなかった」
秀一は体を起こした。
「こんなに汚い俺を、救おうとしてくれて…」
「ありがとう、佑二」
「………」
その病室の外。
《佐藤 秀一》のプレートのすぐ横で
隆之は腕を組んでその壁に寄り掛かり、二人の見えない声を首を少し回して横目で《見》て
再び正面を向いて
そっと眼を伏せた
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