《MUMEI》
遊園地ー遠いー
「お帰りなさ〜い♪」

「ただいま〜!!」

「いいわよ、わざわざ答えなくても!!恥ずかしい!!」

係員の言葉に明るく返す紘に秋葉は突っ込んだ。

「つーかさぁ、秋葉ちゃんってこういうの平気なタイプなんだね。つまんないの!!」

「ほっといてよ。こんなの人工なんだから当たり前じゃないの。こんなの怖がる方がおかしいわ」

「秋葉ちゃんのこの反応もどうかと思うけど、今宵ちゃんのもなぁ。正しい反応といえば正しい反応なんだろうけど・・・・・・」

「はぁ。まだ雪村のキンキンした声が頭に響いてるわ」

今宵達の後を追いかけるようにして入っていった秋葉達。

ここのお化け屋敷はスケールが大きいことで有名なのだが、後ろの方にいた秋葉達にも今宵の叫び声は十分届いていた。

これは秋葉達の分まで叫んでいたかのようだったので、2人はどう反応をとっていいかかなり迷いつつ、結局出口までたどり着いてしまったのだ。

なんとも味気ないアトラクションである。

雪村の怖がりは異常よね・・・・・・。

何であんなので怖がれるのかしら?

「あ、歩雪達じゃん!!何してんだ?」

「どこ?」

秋葉は紘の視線の先にいる2人を探した。

「ほら、あそこ!!」

「あら、本当」

見つけた視線の先には、微笑ましいと言える2人がいた。

今宵がソフトクーリームを片手に幸せそうに笑っている。

その今宵を見つめている歩雪は、優しい眼差しであった。

「やっぱり、あの2人は一緒にいるのが自然よね・・・・・・」

秋葉は幸せそうな2人を見つめた。

最近雪村が歩雪くんを避けてるみたいだった。

理由は分からないけど・・・・・・。

だからなおさら2人が一緒にいるのを見ると、あたしがはいる隙なんて少しも無いことを実感してしまう。

歩雪くんを、雪村を遠くに感じてしまう。

歩雪くんと一緒にいる雪村が嫌いなのかと尋ねられたら、答えは【NO】。

あたしが嫌いなのはこんな事をうじうじと考えている【あたし自身】。

だから今、あたしは1歩踏み出さないといけない。

踏み出した結果を頭では分かっていても、心では整理しきれていないから。

この【遠い】距離を言い訳にせず、踏み出さないといけない。

「秋葉ちゃん?歩雪達のとこ行こーよっ!!」

「はいはい」

紘が歩雪達の所へ駆け出していく。

あたしも・・・・・・。

踏み出さないとね!!

秋葉は勢いよく紘のあとを追った。

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