《MUMEI》
遊園地ー見ないフリー
「あ〜あ。暗くなってきたねぇ〜」

今宵が空を見上げる。

時間が経つのって早いなぁ。

4人が合流した後、しばらく遊んでいるうちに夕日が沈みかけていた。

「そーだなぁ・・・・・・。んじゃあと何か1つ乗って帰るか!!」

「そうね。って言っても、もうほとんど乗り尽くしたわよ?」

どうするの?と秋葉が尋ねる。

紘がパチンと片目を瞑り、巨大な円形の建物を指差した。

「遊園地の最後といえば・・・・・・観覧車でしょ!!」

「そっかぁ、そうだね!!乗ろ乗ろ!!」

今宵は紘の言葉にパッと笑顔を浮かべた。

やっぱ観覧車乗らないと遊園地って感じしないもんね!!

「今度はどう分かれて乗んの?」

歩雪が尋ねると、紘が勢いよくハイッと手を挙げて答えた。

「今度はオレ今宵ちゃんとがいいな♪あんまり一緒に乗れなかったし!!」

「そーだね。ほとんど一緒になんなかったもんね」

ペアを決めるといつも決まって歩雪くんとなってたもんなぁ〜。

うーん、と考える今宵に紘がズイズイと押してくる。

「ね!!駄目?今宵ちゃん!!」

「ううん、いいよ!!乗ろー!!」

「イヤッタァ〜!!!」

今宵の言葉に紘が拳を挙げる。

観覧車みたいな密室だと、琴吹くんの方がいい気がする。

歩雪くんとだとどうしていいか分からなくなっちゃいそうだし・・・・・・。

「んじゃ。あたしは歩雪くんとね?」

「そうみたいだね」

秋葉が歩雪の方に顔を向けて声をかけると、あっさりと返事が返ってきた。

この光景を見て、今宵は目を逸らす。

何でイヤだ、なんて思っちゃうんだろう。

さっきあんなに優しくされたから?

「雪村っ!!」

「何?秋葉ちゃん」

秋葉は今宵の腕をつかんで後ろを向かせる。

そしてボソッと呟くように、しかしはっきりとした口調で今宵に告げた。

「あたし・・・・・・歩雪くんに告白しようと思うの」

「え?」

今、何て・・・・・・?

「だから、観覧車に乗ってる間に告白しようと思ってるの。どう思う?」

真剣な顔つきの秋葉を見て、今宵は胸がギュッと締め付けられる気がした。

そんなの・・・・・・イヤだよ。

歩雪くんが秋葉ちゃんと一緒にいるだけでもイヤだと思うのに・・・・・・。

でも、私には秋葉ちゃんを止める資格は無い。

イヤだ、なんて私の我侭言えないよ。

「うん。良いんじゃないかなっ!?」

今宵は秋葉の顔を真っ直ぐ見て笑った。

笑わなきゃ。

笑わないと気にしちゃうよね。

「そう。じゃあ遠慮なく」

秋葉は口元を緩めると、歩雪の元へ走り寄った。

「今宵ちゃん!!早く乗ろーぜ!!」

「・・・・・・うん!!」

紘の声に今宵は明るく答えたが、心の中は深く深く沈んでいた。

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