《MUMEI》 . 今にも泣き出しそうなわたしの顔を見て、少年はハッと我に返り、急にあたふたした。 「わっ!ちょっ…泣くことないだろ、こんなトコでっ!!」 彼はわたしの肩に手を置き、キョロキョロと周りを見回した。わたしは少年の手を振り払いながら、キッと睨み付ける。 「泣くでしょ、フツー!殺されそうになったんだからぁッ!!」 感情的に怒鳴りつけると、彼はうんざりしたような顔をして、逆ギレかよ…とぼやいた。 「助かったんだし、いいじゃん。結果オーライだって」 「どこがオーライなのよ!!頭おかしいんじゃないッ!?」 噛みつくような勢いで言い返すと、少年はムッとしたように眉間にシワを寄せた。 「なんだよ、恩人に向かってその態度は」 かわいくねーの!と呟いたそのセリフに、今度はわたしがイラッとする。 彼の胸元に人差し指を突きつけて、だいたいねー!と声を荒げて捲し立てた。 「アンタは一体何者なわけッ!?あの男はどうしてわたしを…」 そこまで怒鳴って、わたしはハッと思い出した。 ………あの黒ずくめの男、 確か、『キョウゴク』がどうのって…。 わたしは記憶を掘り起こしたことに興奮し、両手で少年の襟首を掴み、そうよ!と声をあげながら、グイッと彼の顔を自分の方へ引き寄せた。 「わゎっ!おまっ…何すんだよ!!」 突然、わたしの顔が間近に迫ったことで少年は戸惑ったのか、怒った声が上擦っていた。 . 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |