《MUMEI》

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今にも泣き出しそうなわたしの顔を見て、少年はハッと我に返り、急にあたふたした。

「わっ!ちょっ…泣くことないだろ、こんなトコでっ!!」

彼はわたしの肩に手を置き、キョロキョロと周りを見回した。わたしは少年の手を振り払いながら、キッと睨み付ける。

「泣くでしょ、フツー!殺されそうになったんだからぁッ!!」

感情的に怒鳴りつけると、彼はうんざりしたような顔をして、逆ギレかよ…とぼやいた。

「助かったんだし、いいじゃん。結果オーライだって」

「どこがオーライなのよ!!頭おかしいんじゃないッ!?」

噛みつくような勢いで言い返すと、少年はムッとしたように眉間にシワを寄せた。

「なんだよ、恩人に向かってその態度は」

かわいくねーの!と呟いたそのセリフに、今度はわたしがイラッとする。
彼の胸元に人差し指を突きつけて、だいたいねー!と声を荒げて捲し立てた。

「アンタは一体何者なわけッ!?あの男はどうしてわたしを…」

そこまで怒鳴って、わたしはハッと思い出した。


………あの黒ずくめの男、

確か、『キョウゴク』がどうのって…。


わたしは記憶を掘り起こしたことに興奮し、両手で少年の襟首を掴み、そうよ!と声をあげながら、グイッと彼の顔を自分の方へ引き寄せた。

「わゎっ!おまっ…何すんだよ!!」

突然、わたしの顔が間近に迫ったことで少年は戸惑ったのか、怒った声が上擦っていた。



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