《MUMEI》

会場内でこのことに気付いていたのは数人だった。


聖龍がしいたディフェンスに対し、


千葉が選んだ答えは自分が点を取るという物。


もちろんそれは、


聖龍のディフェンスの前に強いられた展開といえる。


だが、


海南の勝機はそれしかなかった。


千葉が点を取る。


という、


強引な手段しか。


もちろん全ての得点…


という意味ではないが、


追う立場である海南には



『攻撃のミス』



は許されないのだ。


聖龍の攻撃を前に、


そう何本も続けて止めることは難しい。


そうなれば当然、


こちらの攻撃をしくじるわけにはいかないからだ。


全てを理解していた千葉には、


もう後先考えずに突っ込むという選択肢しか見えず、


まだ他の選手たちには、


その状況は飲み込めていなかった。


後半開始から2分弱。


千葉にとっては非常に長い残り時間。


体力では不利。


だが点差を考えればまだまだ追い付ける時間。


時間の中にあるメリットとデメリット。


普通の選手は前者を優先し、


結果ペース配分にずるさが生まれる物だが、


今現在、


千葉の頭にあったのは、



(ぜって〜勝つ…)



後者だけであった。

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