《MUMEI》

.


男は、無視したわたしをいまだに半眼で睨んでいる少年を見遣り、柊!と鋭く呼んだ。

「作戦変更。この嬢ちゃんを車へ」

短く命令すると、柊と呼ばれた少年は、了解!と答えてわたしに歩み寄り、軽々と片手で担ぎあげる。

「何すんのよッ!!」

予想外の展開にビックリしてわたしは叫んだ。少年は顔をしかめて、ただ、うるさい、と切り捨てる。

「ヒトの耳元でギャーギャー喚くな」

「喚くだろ、フツー!っていうか、ドコ触ってんの!変態ッ!!」

「お、おい!そんな暴れんなよッ!!落ちるってば!」

「いやー!!離してよー!!」

わたしがジタバタもがくと、少年は面倒臭そうな顔をして、無精髭の男へ振り返った。

「…ちょっと黙らせていいッスか?」

ぼやきながらその右手を手刀の形にする。わたしはゾッとし、慌てて口を閉じた。さっきの闘いぶりから、そんなものを食らったら気絶するだけでは済まなそうだ。



.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫