《MUMEI》

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男は少年を見て呆れたように首を振った。

「やめとけ。仮にもターゲットだ。無傷の確保に努めろ」

男の命令に少年は納得しないような顔をしたが、りょーかーい…と間延びして答えて、大人しく右手をさげる。
そしてさっさと車に近づくと、後部座席にわたしを放り投げた。その際、勢い余ってわたしは顔面をシートにぶつけてしまう。

「痛ーいッ!!女の子の顔になんてことすんのよ!」

赤くなった鼻を撫でながらいきり立ったのだが、少年はまったく聞いていなかったようで、思いきり無視される。

「ターゲット確保!」

わたしのことは放ったまま、少年は高らかにそう言って、無精髭の男に向かって敬礼した。男は満足そうに頷き、それから黒づくめの男を拘束している八代と呼ばれた男の子に、おーい!と声をかけた。

「そんじゃ、俺等は先行くからなー。後は適当に頼んだぞ」

軽快な口調でそう言うと、男の子は、了解です、と小さく答えた。
無精髭の男は車の助手席に乗り込み、少年は後部座席のドアを閉めた後、運転席に乗り込んだ。



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