《MUMEI》

.


…。

……。

………って!



「ちょっとちょっとちょっとッ!!」


わたしが後ろから喚くと、前に座っているふたりが、うるさそうにこちらへ振り返った。

「どうした、嬢ちゃん。今度は何が気にくわないんだ?」

無精髭の男が呆れたように言ってきたので、わたしは、最初から今の今までずーっと気にくわないわ!とツッコミを入れる。

「わたし、アンタ達と一緒に行くだなんて、一言も言ってないんだけど!勝手に話、進めないで!」

唾が飛びそうな勢いで捲し立てると、少年が呆れ顔で口を開いた。

「もう乗っちゃったんだから、どっちでもいいじゃん」

わたしはすかさず、良いワケあるかッ!と反論したがあっさり無視され、今度は無精髭の男がヘラヘラ笑って言う。

「そーそー!いい加減、腹括れって。見苦しいぞー」

男の適当な態度にムカつき、うるさい!と、わたしは怒鳴る。

しかし、男はまったく聞く耳持たずな上、さらに、

「…とにかく今は場所を変える。話は後だ」

いいな?と、いきなりドスの効いた声でそう言ってきたので、わたしは怖くなってグッと言葉を飲み込んだ。

ようやく大人しくなったわたしを見て少年は、手間がかかるヤツ…と、呆れたように肩を竦めてから、

「そいじゃ、出発ー」

いかにも呑気な抑揚と共に、夜の闇の中へと車を発進させたのだった。



******

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