《MUMEI》

.


………この人、見た目はちょっと幼いけど、

手はけっこう大きいんだな。

『男の人の手』、って感じ。



手を引かれ、ゆっくり歩く。少年の手の平から伝わる暖かさにうっとりしてわたしは静かに目を伏せた。



………不思議。

この手の温もりが、
なんでか、すごく安心する…。



…。

……。

………って!!

わたしってば、何考えてんのッ!?



急激に少年のことを意識してしまい、わたしは慌てて目を開き、少年から少し身体を離した。恥ずかしさで顔がみるみる熱くなっていくのを感じる。

わたしの慌て振りに気づいた少年は不思議顔で振り返り、どした?と首を傾げた。

「顔、真っ赤だぞ?熱でもあんの?」

そう指摘されてわたしは余計にドギマギし、なんでもない!と大きな声で返した。

わたしの怪しい態度に彼はピンときたのか、ニヤリと笑い、そうかな〜?と言いながら、わたしの顔を覗き込んだ。

そうして、つないだ手をわたしの視界に映るよう掲げてみせた。


「…もしかして、照れてる?」


囁くような優しい声が耳元で響き、瞬間、頬が熱を帯びる。

「ち、違…っ!」

「あ、赤くなったー。カワイ〜ィ!」

図星のわたしはとっさに言い返そうとしたが、少年の茶化す声に遮られてしまう。

わたしは悔しくなって、懸命に彼を睨み付けた。

「う、うるさいわね!ほっといてよッ!」

「あれ?今度はツンデレ?」

「違うわよッ!!」

「あーあー、どんどん赤くなっちゃって…」

「そ…っ!いちいち、そーいうこと言わないでッ!!バカッ!」

そんな風に、ふたりでぎゃーぎゃー騒いでいると、

「何やってんだー。痴話喧嘩は後にしろー。早く来ーい」

遠くから無精髭の男の面倒臭そうな声が聞こえてきたのだった。



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