《MUMEI》

ヒュッ!!



広瀬はシュートを打たず、


阿久津へのパスを出す。


キーパーは体勢を立て直し、


正面からのシュートに備える。


だがそれは、



(これ以上…)















バシッ!!













(足引っ張るなんてごめんだ!!)













無駄に終わる。













「ナイスカットッ!!」



「でかした古賀ッ!!」



ボールは古賀にカットされる。



(バカ瀬がッ!!)



戻る聖龍。



「出せッ!!」



走り出す海南。


先頭にいるのは未來。


広瀬が遅れる分、


未來のマークにつける選手がいない。



(こいつスタート早くね〜か!?)



定石としてサイドがシュートを打った場合、


ルーズボールに備えて1枚目の選手は速攻には走らない物だが、


未來は誰よりも早くスタートを切っていた。


ポストへのパスを読んでいた…


わけではなく、


ただ単純に、



「ナイスパスッ!!」



そんな定石を知らなかっただけ。



(さすが素人…)



「キーパー勝負ッ!!」



ダッ!!



モーションに入る未來。



「ぬぅぅぅぅんッ!!!!!」



「止めろモジャッ!!」



バンッ!!



(やっ…)



バスッ!!



(やられた…)



「ナイッシューッ!!!!!!!」



後半6分49秒。



22対20。



正面からバカ正直なシュートを打っても通用しない。


前半の時点でそれに気付いていた未來が打ったシュートは、


高い打点を活かしたバウンドシュート。


軌道を読みづらいこのシュートが決まり、


点差は2。


試合が動き出した瞬間である。

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