《MUMEI》

ダッ!!



走り出す千葉。


右45が古賀にボールを回そうとするも、


阿久津の牽制の前にパスが出せない。


それを察した千葉は、


ロングパスは危険と判断。


自らボールを貰いに行く。



(まだ走れんのかこいつ…)



ヒュッ…!!



ボールを受け取った千葉はすぐにシュートを打つ。


阿久津が前に出ている分中のディフェンスは薄く、


桜井・二ノ宮の守る2・3枚目は大きく間が空いていた。


千葉のクイックが打たれる間にその間を完璧に詰めることはできず、



バスッ!!



得点を許す。



「くっ…そ…!!」



間が空いていた。


それは相手に打ちやすい状況を提供するという致命的なミスであったが、


キーパーの立場からすれば



『視野が広い』



というメリットにも取れる。


にも関わらず、


奥本には千葉のシュートが止められない。


もはやこれは理論ではなく、


どのスポーツにも起こりうる勢いという名の奇跡。


その奇跡の現象を今、


会場にいる全ての者が目撃していた。



「返せばいいッ!!」



23対21。



ボールは聖龍。

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