《MUMEI》
…大晦日は病室で
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俺は年明けを病室で過ごすことになりそうだ
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来たる大晦日。
午後十一時二十二分
秀一が来てくれたのは
もう、一昨日の話。
テレビの枠の中では、芸人が年末と今後の自分の人生を華やかに飾るべく
体を張った様々な挑戦をしてる
俺はぼんやりとそれを眺めながら思った
(隆之は見舞い、きてくれないのな…)
布団をかぶり直して目を閉じる
(アイツ……いや、コイツは…マジで…)
そして体を反転させて目を開き
「ワケ分かんねーんだよ。お前は…」
息を切らして、髪に雪がまぶされた様に乗ったままにしてベッドの横に突っ立っている…
「…っ見舞い…遅れてゴメンな…」
隆之を見据えた
「いいよ…見舞いなんか……」
「…っは……佑二が怪我したの…俺のせい、だから…」
余程走ったのだろう、切れた息の間から絞り出す、言葉
「合わせる顔、無くて…」
隆之は俺と目を合わすのが怖いみたいに
笑って誤魔化して、ぶら下げてたビニール袋を二つある丸椅子の一つに置いた。
「違う…俺が望んだんだ……悪いのは、俺だ。何も気兼ねすんなよ」
「………」
隆之は俯いて、唇を噛んで
またすぐ、笑顔で言った
「こんな時間に、ゴメンな。今なら、看護師も少ないから面会時間が長引いても…あんまりバレないんだ。」
実際ここ来る時四つん這いで来た、と隆之
「…そっか」
…ありがとな、
なんて言うのは
幼馴染みだからこそ照れくさくて
その言葉は大きく息を吸うと共に飲み込んでしまった
「俺……あれを見せれば……あの現場を直接見せれば…お前が秀一を嫌うんじゃないかって、思ってた。」
「!」
…な…にを……?
「…でもそれは、とんだ計算違い。…結果は真逆だったな」
計算、違い……
「嫌な奴だろ?俺。秀一を汚れた奴だって、教えてやろうと思ったんだ。…でも実際、汚いのは俺だ。もう、信用してくれなくて良いから…」
「でも俺…佑二が離れてくの、怖くて…」
「………隆之…」
呼んだ瞬間に、
『たかゆきっ!』
幼い日の俺の声が、
『負けねぇからなっ』
隆之の声が
記憶と一緒に、甦って来た。
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