《MUMEI》
蒼の槍使いと朱金の騎士
「ふぅ、後遺症とかもなさそうだね。この部屋、もともと診察専用だからベットそれしか無くてね。ロナイの奴、ココ三日くらい寝てないから、できれば譲ってやってくれ。」
すまなそうに頭を下げるバンプ。
「あ、はい。」
ベットにロナイを寝かせるバンプ。
「少し散歩でもしないか?」
「はい。」
バンプの誘いに喜んで承諾し、病室を出る。

リースの病室に戻った彩詩が見たのは、床に倒れているリースの姿。
急いで抱き上げ、ベットまで運ぶ。その途中にリースが
「・・彩ねぇ・・」
そう呟いたのが聞こえた気がしたのは・・気のせいだろうか。
ベットにリースを寝かせ、自室に保管されていた槍、クロノ・レベリオンとロアの形見である髪止めをベット側に置いておく。
「・・・リース。無事でよかった。」
小さく呟く。
あの事件から3日、生存者の話によればリースは毎日のように第6階層より深くまで一人で行っていたらしい。全身の傷は簡単な手当だけで直りきっていた傷のほうが少ないくらいだった、相当無理をしていたのだろう。
そっと頬に手を当てる。
「・・・ロアが死んでから、何があったの?リース・・私じゃ力不足だったのかな?」
呟く声にも力が無い。ロアが死んだ後、リースと会ったのは数回だけだった。

「・・・ん・・」
小さな声を上げ、リースが目を覚ます。
「おはようリース。」
泣きそうになる顔を無理に笑顔にして声をかける。
驚いたような顔を浮かべたリース。
「・・彩詩姉さん。」
「ダメだよ、まだ直りきってないんだから・・」
彩詩が押し留めようとするが、それを振り払うように体を起こす。
ベットに立てかけるようにして置いてあった槍を見つけ、安心したように息を吐くリース。
「リース、少し話しない?」
落ち着いた様子のリースに声をかける。
「・・・話す事なんてない。」
視線をそらして、小さい声で吐き捨てるように口にするリース。
「それじゃあ・・独り言でもいいや。」
「・・ご自由に。」
諦めたように、ベットに横になるリース。
「護りたいヒト達が居て、だけど、私は護れなくて・・自分は弱くて、ダメな奴だって思う。何度も、何度も失って来たから。」
天井を見上げながら言葉を口にする彩詩。
「大切なヒトを失ったトキ、私は、魔物が悪いとか、戦争だから・・そう言い聞かせて生きてきた。自分は悪くないって逃げてた。」
リースはベットに横になったまま静かに聴いてる。
「それは違うって怒ってくれる人が居て、だったら何が悪いんだ!?って聞き返した。」
「・・・・・・自分が悪いのだろう。弱かった自分自身が・・」
リースが自嘲気味に呟く。

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