《MUMEI》

「…あんたは?」

「お目に掛かるのは初めまして、だな。私の名はサプリだ。私が何をしていて、お前との関係について諸々、リキから話は聞いたんだろう?」

「はぁ。」

雅俊は空腹感が全身を覆っていて、多少不機嫌なのを隠さないで受け応える。
小人と言うよりは、上手いこと縮小された。と言った方が良さそうな形をしたその男は、自らをサプリと名乗った。

「お前は?」

「明智雅俊。あぁ、もしかして、『マサ』って言った方が良かったり?」

昼休みにソウランに入った時に聞こえて来た声と同じかどうか思い出そうとして、その時の声が山男の事を「リキ」と呼び、呼ばれた本人は自分の名前を正しく呼ばない事に憤慨していたことを思い出す。
その後に現れたジェイオルもまた、山男の事は「リキ」と呼び、兄貴の事は「ヨシ」と呼んでいた。さらに、パワーゲージを入れた後、出現したプレートには数字とともに「MASA」と書いてあり、それを見てジェイオルはやはり、雅俊の事を「マサ」と呼んでいた。

「リキの様な頭の固い主張はしないんだな。スレシルには、通例としてフェル界での通り名をつける事になっている。まぁ、俺もそっちの方が呼びやすいからな、通り名で呼ばせてもらう。」

「マサって呼ばれてたことが無い事もないから、別に違和感ないし構わないですよ。」

「敬語はやめてもらえるか?慣れてなくてな。挨拶は簡単に済ませよう。実はお前に話しておきたい事があるんだ。」

サプリはそこまで言うと、手を地面にかざし、わずかに振る。すると、そこからにょきっと生えてきたかの様に椅子が現れた。
ちなみに、雅俊は昼休みと同じく生物準備室で椅子に座っていたため、今回も見えない何かに座っている状態のままだ。

「フェル界で生活することについて?」

話しておきたいことの見当がつくわけもなく、なんとなく思いついたことを聞いてみるが、サプリは首を振った。

「いや、それはリキから聞いただろう?その辺は気にしなくても構わない。元々、この学校は寮があるからな。夜だけフェル界にいる事になるだけだから、ごまかしが聞く。多少、つじつま合わせるための魔法も使うから問題はほとんどない。空間の移動も部屋ですれば良い。」

「となると何?」

「実は、フェル界のお偉いさん方から、ある人物を保護するように通達が来ていたんだ。」

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