《MUMEI》

まるで某アニメのキャラクタ―の様だと九重は笑う声をつい漏らしてしまう
「いいな、これ。鈴、上出来だ」
「はい。頑張りました」
「どうだ、くさ。専用風呂の入り心地は?」
すっかりとその湯に身を寛げているくさへと問う事をしてみれば
くさは首だけを巡らせながら
「うむ、いい湯加減だ。奥方、感謝するぞ」
鈴へと感謝の言葉
どういたしまして、と返す鈴は本当に楽しげな様子で
その微笑ましさに九重は微かに肩を揺らすと咲と桜を抱え立ち上がる
風呂に入る旨を伝え、九重は子供たちを連れ立って浴室へ
「鈴、タオル」
「はい。咲、きれいきれい、よかったね〜」
身奇麗にした咲を鈴へと預けると、次はさくらの番
二人を入れ終わる頃には九重はすっかり湯に中ってしまっていた
「……主殿、立派に茹っているな」
上半身裸のまま椅子へと身を寛げる九重に
相変わらずビール缶を小脇に抱えた草がテーブル上を歩いてくる
「二人いっぺんに入れれば茹りもするわ」
寄越せ、とくさの小脇からビールを奪い取ると
九重は一気に煽り、空いた缶を流しへと持って行く
「智一さん、そろそろこの子たち、寝かせてきますね」
その九重の背に向けられた鈴の声に
九重は僅かに首を振り向かせると、口元へと微かに笑みを浮かべて返していた
「……見つめ合いで通じる二人、か。仲睦まじいのはいい事だな、主殿」
「は?」
行き成り何を言い出すのか
つい聞き返してしまえば、何故かくさが頬を赤らめ、それを隠すかの様に両の手でそこを覆ってた
「余りのらぶらぶ振りに我の方が照れてしまうではないか」
「は?」
一体何にそんなに照れているのか
さっぱり解らない九重が怪訝な表情を浮かべて見せれば
「主殿も照れ隠しか?まだまだ若いな」
その口元には何故か勝ち誇った様な笑みが浮かんでいる
何となくだが小馬鹿にされた様な気になったらしい九重が、
だが
反論すること自体が既に面倒なのか何を言う事もせずに
九重はそのまま一人晩酌を続けたのだった……

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