《MUMEI》

「管理人の方はもう……」

男は俯き、何やら考えている。
陰気な雰囲気だ。


「自分も今日、久しぶりに来たもので。」


「……この辺りで昔、やくざ絡みの事件が有りましたよね。」


「さあ……?」

口は災いの元だ。


「その時……少年が巻き込まれ、保護されたんです。」

目が虚ろだ。
あゆまの母親を思い出して、寒気立つ。


「水買ってきたよ。」

帰って来たあゆまに軽く接吻してやる。


「行こうか……ショウタ。」

あゆまの肩を抱いて、その場を離れた。
その際、男を自然と睨みつけていた。


「あのぉ……!その時……」

男は独り言を呟き続けていた。


「どうしたの。」

あゆまに不審がられた。


「道を聞かれた。」

これは嘘ではない、防衛本能だ。


「……ふうん。」

俺達は自然と指を絡める、無知なふりをして互いの体温で鍵をかけた。

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