《MUMEI》
駅員室
「どうする?」
潰れた入口を見つめながら、ユキナが言う。
「どうするったって……掘るか?」
「これを?誰が?」
「おまえ」
「スタンガン、打つよ?」
「やめろ」

 ユウゴは入口を塞いでいる瓦礫の具合を確かめた。
きっちりとはまってしまって、叩いてみてもびくともしない。
「……駄目だな。まだ、中からのほうがなんとかなりそうだ」
「えー、また戻るのー?」
不満たらたらに、ユキナは頬を膨らませた。
「しょうがねえじゃん。入れないんだから。文句言ってないで、さっさと行くぞ」
ユウゴはまだ何か言いたげなユキナを置いて、東口へ戻った。


「かなり時間の無駄だったね」
「ああ、全くだ」
東口から再び、薄暗い地下鉄の駅へ入る。
「なんか、道具とかあれば楽なのにね」
「スコップとか?」
「そ。持ってないの?」
「さすがにそこまでは持ってない」
「だよね。あ、駅員室に何かないかな?」
「ああ、そうだな。見てみるか」
広場に出た二人は、さっそく改札横の駅員室へ侵入した。


 室内は、乱暴に荒らされていた。
書類が散乱し、机はひっくり返り、椅子の脚が天井を向いている。
ざっと見た感じでは、使えるものは何もない。

「ユウゴ、こっちの棚になんかありそう」
さっそくお得意の物色を開始していたユキナの声が奥から聞こえてきた。
「これとか、どう?」
近くに移動したユウゴに、ユキナは工事現場で見られるような大きな金づちを手渡した。

ずっしりと重い。

「ああ、使えそうだ」
確かめるように、それを握りながらユウゴは頷いた。
同時に、背後でカツンいう音が響いた。

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