《MUMEI》

雅俊は、昼休みに山男にした質問を思い出していた。

『仮に、他のフェルの力を吸収したヤツが、この学校に居たとして、そいつもスレシルなんですよね?』

ふと思った事を口に出しただけだったこの質問が、まさか実際に同じ学校内で存在している事だったとは。

あの時、山男はそんなことがあってたまるか。と言っていたはずだが…



「サプリ?うちの学校には、俺以外にもサプリのスレシルがいるんだよな?」

「…まだ、はっきりと覚醒はしていないみたいだが、どうやら…いるな。」

「そいつらは?俺みたいに覚醒前に見つけ出して保護しなくていいのかよ?その、他人のスレシルを保護する必要があるんだったら…」

「必要ないよ。」

あまりにもはっきりと言うサプリに多少怪訝な顔を返すと、サプリは、めんどくさそうな顔で説明をする。

「ノルフェスは、覚醒前のスレシルに手を出すことはほとんどしない。そもそも人間に接触すること自体、かなりのリスクを伴う行動だからな。よっぽどの目的が無い限りそんな馬鹿はしない。ただし、スレシルに関しては接触のリスクはほとんど無いからな。」

「覚醒前のスレシルを保護する様な面倒な事はしない。と?」

「あぁ。下手に接触したりすれば、スレシルにならなくてすむかもしれない人間まで引きずり込む可能性もある。それなら、ぎりぎりまで近づかないのが得策だ。少なくとも俺はそう考える。」

「…で?その通達を受けて、その探し出すべきスレシルが誰かまでは分からないのか?この学校に入学したことまで分かっているのに。」

サプリはわしわしと自らの暗い赤紫色の髪の毛を右手でかき乱すとため息をついて、腕と脚を組む。

「そもそも、フェル界のお偉いさんがたは、スレシルの監視はその基になったフェルに全てを一任して滅多に口を出してこない。お前の事だって、全て俺が面倒を見ることになる。仮に、スレシルが適合魔法を完成させるさせないも、推奨されているだけで、義務ではない。のにも関わらず、『適合魔法を完成させていない』を強調して、さらに『行方が分からなくなった』と言って俺の所に通達が来た。」

「…お偉いさん側には探(サーチ)を使えるフェルはいないのか?」

「いるさ。もちろん。探(サーチ)は希少な能力だが、いないわけではないからな。」

「だったら、すぐにそいつが見つけて…」

「探(サーチ)能力者がいたとしても、スレシルの持つ力は、フェルに比べるとあまりに小さい。その微かな力を感知できるほどの探(サーチ)能力者なんか、希少な探(サーチ)型の中でもさらに希少な存在なんだ。広大な砂漠の砂の中から一粒の小さなダイヤを見つけ出す位根気のいることらしい。」

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