《MUMEI》
心に秘めたモノ
ゆっくりと首を左右に振り、
「そのヒトは「自分が悪いなんていう奴は、戦争が悪いとか言ってる奴等より悪い。死んだ責任ってのは死んだ奴が持ってるんだよ。自分が弱かったから、そんな事言うのは・・死んだ奴の今までをバカにしてる。俺たちみたいな騎士にとって死は・・己の信じたコトを最後まで守り通した証なんだよ。悔いがあろうが無かろうが、そいつが今まで生きてきた証なんだ。仲間を失って悲しいのなら泣いたって構わない。だけどな、死んだ理由をお前が勝手に決めて、死者に押し付けるな!」そう言って、思いっきり叩かれた。」
小さく息を吐き、リースの顔を見る。
「・・姉さんが、死んだのは・・姉さんの責任だって言うのか?」
彩詩から視線をそらし、言葉を紡ぐリース。
「解らない。だけど・・ロアは最後に笑ってくれた。この子を護れてよかった。そう言って・・笑ってくれたから。ロアが死んだのは辛いし、今でも失った怖さは消えてない。・・私は、私にとって大切なことを護りたいんだ。そうしないと、ロアが最後に笑ってくれた顔を曇らせてしまう気がするから。」
言い終えると、病室から出ようと立ち上がる彩詩。
「彩ねぇ・・どうして、そんなに強く生きていられるの。私には・・そんなことできない・・」
目を伏せたまま、リースが問う。
「私は、ロアの友達だから、ロアの隣に立って胸を張れるヒトじゃないとダメなんだよ。対等の立場だからこそ「友達」なんだから。」
「「友達」だから・・私はどうすればいい。彩ねぇ・・教えて。」
今にも壊れそうなリースの声。
「私には、解らない。リースが必死に考えてどうすればいいのか決めるしかないコトだよ。」
振り返らず、そう口にする。
「・・・そうか。」
諦めたような言葉。ふぅ、と小さなため息の後、彩詩が言葉を続ける。
「一つだけ、彩詩お姉ちゃんが教えてあげる。ヒトに教えてもらう答えなんて意味はない。自分が悩んで手に入れないと・・答えじゃない。私がもう気にするなって言った所でリースは変わらないでしょ?答えは一人一人違うし、なにより、自分が納得できなければ意味はないんだから。」
ドアに手をかけ、病室を出ようとする彩詩が思い出したように振り替える。
「いつでも会いに来て。待ってるからさ。それから、ロアの形見の髪留め、リースに譲るね。私が持っていてもしょうがないから。」
そう言って満面の笑みを浮かべる彩詩。
「・・彩ねぇ・・」

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