《MUMEI》

だんだんと熱のこもる恭司の口調に、どこからか苦笑が漏れる

その様子をみて、ようやく自分の熱さに気付く恭司


「…まぁ、今日のところはこんなところにしておいて」と若干不満げな彼。
そして、話題を切り替え、続ける。


「知ってのとおり、この世の中にはまだ解明されてない謎が数多存在する。
俗にいう都市伝説だ」

「それはある意味神秘的だったり、虫の良すぎる話だったり、リアル味に溢れていたり、懐疑的にならざるを得ない話だったり、眉唾ものから目から鱗の話まで、果てなく存在する」

「例えば人面犬」
「例えば緑の救急車」

「科学で追いつけないそうした謎を、地域伝承、社会構造からアプローチしたのが民俗学だ。
しかし、都市伝説すべてを昔話や習慣、地域の伝統や伝承に求めるのも必ず矛盾がでる。
中には単なる噂だったり、根も葉も無い作り話が独り歩きした物も少なくない」

「我々、社会人間科学の学者や学生は、こうした謎に対して、文系からは社会心理学から政策科学、哲学、民俗学、理系からは応用人間科学、理工学、バイオロジーに到るまで、非常に幅広い分野からアプローチするのが仕事だ」


彼はそう締め括る。

若き助教授である恭司は、非凡な才能に恵まれ、「流体力学」「ゲーム理論」「言語学」「電子物理工学」「社会心理学」5つを、まさかの同時修了、果ては博士号まで手に入れた、まごうことなき天才である。

論文を出したかどうかに限るなら、分子生体学、医学、法学、論理学、古典文学、更には理論音楽、スポーツ科学までに及んで幅広い貢献をしている。

そんな彼のために作られたと言ってもいいのが、この社会人間科学である。
大学がわざわざ彼のために新しく学科を増設したのだから、彼の才能、人気ぶりは窺い知れよう。

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