《MUMEI》 「ここは……!」 気付けば水浸しで屋敷の床に倒れていた。 「遅い!」 ぼくの頬を千秋の踵が掠めた。 「この子を虐めないで。」 内館さんがぼくを引き起こしてくれる。 「こいつは口で言っても分からない……そういう奴の相手をしている者同士だと思ったが。」 千秋様は内館さんと共通点があるようだ。 「でも……」 「内館さん、漢同士の友情は拳で語り合うんです。」 まだ、自分は非力だけれど、千秋様に鍛えられてるから二人が戦友と呼ばれる日もあるだろう。 「え……」 何かを言いたそうにしていたが、ぐにゃりと内館さんは倒れ込んだ。 「お帰りなさい。」 新井田さんが長い指を鋭くし、倒れた内館さんの後ろから現れた。 「ただいま帰りました。」 ここで、やっと帰宅した実感が湧いた。 「お疲れだったでしょう、浴室で綺麗にしてから食事になります。」 新井田さんに案内されながら、頭の中で何かを忘れてるような気がした。 ……気のせいかな? 前へ |次へ |
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