《MUMEI》

「ここは……!」

気付けば水浸しで屋敷の床に倒れていた。


「遅い!」

ぼくの頬を千秋の踵が掠めた。


「この子を虐めないで。」

内館さんがぼくを引き起こしてくれる。


「こいつは口で言っても分からない……そういう奴の相手をしている者同士だと思ったが。」

千秋様は内館さんと共通点があるようだ。


「でも……」


「内館さん、漢同士の友情は拳で語り合うんです。」

まだ、自分は非力だけれど、千秋様に鍛えられてるから二人が戦友と呼ばれる日もあるだろう。


「え……」

何かを言いたそうにしていたが、ぐにゃりと内館さんは倒れ込んだ。


「お帰りなさい。」

新井田さんが長い指を鋭くし、倒れた内館さんの後ろから現れた。


「ただいま帰りました。」

ここで、やっと帰宅した実感が湧いた。


「お疲れだったでしょう、浴室で綺麗にしてから食事になります。」

新井田さんに案内されながら、頭の中で何かを忘れてるような気がした。


……気のせいかな?

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫