《MUMEI》

「俺は、自分がどんな魔法が使えるのか、早く知りたかった。」





山男に遠慮するかのように、少し声のトーンを下げた雅俊は、
その代わりに口許をニヤリと歪める。



「でも、今まで使ったことの無い魔法を突然使えるようになるわけでは無いみたいだったから、暗示を掛けることにしたんです。」



「暗示?」



「そう、今までも何かある時にはいつも自己暗示掛けていたんですよ。
『俺は出来る』って。
それを強く思えば思うほど色んな事が上手く回っている気がするんですよね。」




「自己暗示で学年1位なんか取れるのか。」




山男の言葉に、2、3回目を瞬かせると、再び小さく笑って続ける。


「…思い込みですよ。試験だってなんだって思い込めばなんでも出来ますから。少なくとも俺は。」

「…流石というかなんというか。」



多少呆れた顔をした山男はすっかり冷めてしまったコーヒーを飲む。



「だから、俺もあの時自己暗示を掛けたんです。
『俺は魔法超得意』って。
そしたら、その自己暗示が、魔法になって、自分の脳に影響したみたいで。」





「勝手に?」

「勝手に。
ですけど、あぁこれが魔法だ。っていう確信みたいなのはありましたよ?
今までの言葉だけの力ではない何かが確かに働いた感覚。」





そこまで聞くと山男は低く喉をならしながら腕を組む。



「結果として、相手に幻覚を見せる能力を持っているのが、『分かった。』か。
幻覚を見せるって言うのはおそらく脳神経に何かしらの影響を与える能力だから、自ら幻覚状態に陥って魔法が引き出された。って所か。。」


「能力って言葉を使うくらいですから、
自分では気付いていないだけで、潜在的に持っている可能性が高いって思い至ったのは、
一つ目の魔法を繰り出した後でしたけどね。」


「偶然とはいえ、助かったけどな。
頼むから、悪事には使うなよ?善彦もそうだけど、使いようによっては驚異になりかねない能力だから。」



「…自分で判断出来る限りは善処しますよ。」


「それと、絶対に、魔法が使えることが周りにばれないように。」



「え?」




「スレシルの能力が人間として異常なのは分かっていると思うけどな。
それを知った事で人間にまで狙われるようになるのはめんどくさいだろう。」


「そういうのもあるんですね。。」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫